「美式天然」がトリノ映画祭グランプリ受賞
9年がかりで完成した日本の自主制作映画が、イタリアの第23回トリノ映画祭でグランプリを受賞した。受賞作は坪川拓史監督(33)の「美式天然(うつくしきてんねん)」(95分)。脚本に納得した吉田日出子、小松政夫、常田富士男ら芸達者がスケジュールの空きを使って協力した。
新人発掘の場とされるコンペ部門で、14本の出品作からスロベニア人監督と同時受賞した。
作品は今年夏に完成。地方都市の古びた映画館を舞台に、昭和初期と現代の二つの物語が1本の無声映画とフィルム運びの少年を軸に展開する。故郷、北海道長万部町にあった古い映画館「長万部劇場」の取り壊しが制作の動機だった。
96年秋に制作入り。資金不足で撮影に6年、編集などに3年近くかかった。「ムーミンパパの声」で知られた主演の高木均は04年2月、完成を待たず78歳で亡くなった。
「高木さんには新宿で偶然道を聞かれ、その場で出演を頼んだ。電話で交わした最後の言葉は『早くしないと、おれ死んじゃうぞ』でした」
19日の授賞式。映画祭会場となったホールも偶然、解体直前だった。坪川さんは「この劇場が私を呼び寄せてくれたのでしょう」とステージにキスをし、喝采を浴びた。
日本への帰途、パリに立ち寄った坪川さんは「出演料なしで協力してくれた俳優さんたちに、少し恩返しができました」と喜びを語った。
映画っていろんな作り方があっていい。
こういう時間をかけた映画の作り方があったっていいじゃない。
高木均さんの励ましの言葉は泣けるなー。