理由

eigadojo2005-01-09

こんな映画を観た。

インディーズ映画の巨匠・大林宣彦監督の最新作は、宮部みゆき直木賞受賞作の「理由」の映画化。
最初はwowowのドラマとして企画されたものですが、構想がふくらみ、wowowとPSC(大林監督の会社)の協同製作というかたちで完成。昨年4月にまずwowowで放送され、その後に劇場公開されました。


東京下町の高層マンションで起きた4人の殺人事件。
一家惨殺事件かと思いきや、さまざまな証言から彼らは全くの他人同士だったということが判明。
何故彼らは、そんな奇妙な同居生活を送っていたのか?どうして殺害されたのか?その理由は?


原作の「理由」は、新聞連載小説だったということで、さまざまな人々の証言で構成されたフェイク・ノンフィクションのスタイルで書かれています。映画はその映像版という形で進行するのですが、証言する人々が、どれもこれも大林組の役者さんたちばかり!107人の役者は、ノーメイクで証言者になりきって語ります。
107人の中でも、特に岸部一徳勝野洋の名演が光ります。登場人物が多いので「助演男優賞」にノミネートされなかったのが残念。アメリカのゴールデングローブ賞が、ロバート・アルトマン監督の「ショートカッツ」の時に、すべての出演者に対してアンサンブル演技賞といったものを出してことがあったけど、この「理由」のために同じような賞を作ってもよかったかも・・・・・・・・。


映画の場合、基本的に「人称」は一定なのが原則なのですが、この作品ではその「人称」がアメーバのように変化しながら進行します。映画の中で「虚」と「実」の狭間を行き来する感覚がすこぶる気持ちいい!
アメリカではこのジャンルは、チャーリー・カウフマン(『マルコビッチの穴』『コンフェッション』の脚本家)の独擅場ですが、日本でもこの作風に挑戦する監督が出てくるとは天晴れ!
思えば、森田芳光による「模倣犯」(最悪!)もそういうアプローチで作られている部分もあったのですが、やはり同じインディーズ映画出身の大林監督が一枚も二枚も上手だったようです。
そう言う訳で、トップページも「理由」の画像に差し替えました。

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