アフターダーク

アフターダーク
こんな本を読んだ。
9月出た村上春樹の新刊。
他の本ばっかり読んでいてなかなか読めませんでしたが、読み出すとやっぱりスラスラ読み進められました。
物語の構成は、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」以来村上作品に「よくあるパターン」で2カ所(正確には3カ所)にいる人物の描写が交互に語られてゆきます。
片方は即物的に、片方は村上節の面白いセリフの応酬です。やがてその2カ所が相互に影響を及ぼすようになる・・・・・・と言う点も「よくあるパターン」です。
内容的には、これまでの作品の焼き直し的な印象を受けましたが、夜更けから夜が明けるまでに起きたことを描くという時間設定が面白いと思いました。
どちらかというと、来るべき大きな次回作への練習問題をこなしたという印象です。「ノルウェイの森」が、前作の短編「蛍」「めくらやなぎと眠る女」(短編集『蛍・納屋を焼く』に収録)を発展させたものだったように・・・・・・(「ねじまき鳥クロニクル」のようにあとで続編が書かれるのかもしれません。)
アフターダーク」というタイトルも、来るべき「夜明け」と対になる言葉といえるものですし・・・・・。

一番実験的だと思ったのは、物語の語り手を「われわれ」「視点」と表現したところ。まるで映画のカメラのように物語の中でフレームを切り取ってゆく文体は、村上春樹が「新しい時代」に突入したことを感じさせます。
余計に次回作が楽しみになりました。