スコルピオンの恋まじない

こんな映画を観た。
以下の原稿は熊本のタウン誌「モコス」に掲載されたものです。

コンスタンチノープルマダガスカル!」
いきなりですが、この言葉がこの秋の流行語に決定です。なぜか?これは、ウディ・アレンの最新作「スコルピオンの恋まじない」に登場するまさに「恋の呪文」なのです。

舞台は1940年代のニューヨーク、アレン映画お得意の舞台設定。一流保険会社の調査員ブリッグス(アレン)は、最近入社してきたバリバリのキャリアウーマン・フィッツジェラルドヘレン・ハント)とは犬猿の仲。ある日、二人は同僚のパーティで怪しい魔術師に「恋の呪文」をかけられてしまいます。その言葉を聞くと、お互いが最高の恋人に思えてくるという不思議な呪文。やがて謎の宝石泥棒事件が起きて、事態は思わぬ方向へ・・・・・・・・。

前作「おいしい生活」に引き続いてスピルバーグの「ドリームワークス」が製作を担当したこの作品。アレンらしいロマンチックで楽しくて大笑いできるまさに映画のマジックがたっぷり詰まった1作になっています。
ラジオ・デイズ」「ブロードウェイと銃弾」「ギター弾きの恋」とこれまでもアレン映画には、1940年代が何度も登場しています。今回の作品で特に重要なのは、当時の模様を人工的に再現するだけでなく、現在のニューヨークの街並みから1940年代の風景を切り取っているということ。
「僕はこの時代に魅了されているんだ。音楽もファッションも・・・・・とにかく雰囲気がすきなんだ」。ニューヨークという街が大好きなアレンらしい一言です。だからこそ「9.11」のWTCの惨事には、誰よりも胸を痛めていた映画監督です。かずかずの作品でアカデミー賞にノミネートされながらも、毎度欠席し続けた「パーティ嫌い」の彼が、今年のアカデミー賞表彰式にだけは登場したのには、そういう理由があったのです。「あのニューヨークを励ますために、何かしたい!」と彼がステージで紹介したのは、ニューヨークを舞台にした数々の映画の名場面集でした。(泣けるネー!)
 今回の「スコルピオンの恋まじない」では、そんアレンのニューヨークに対する愛情を、美術監督のサント・ロカルスと撮影監督のファオ・チェイ、衣装のスザンヌ・マッケイブというアレン組スタッフが、見事に映像化しています。ヘレン・ハントの元祖キャリアウーマンぶりや「謎の女性」を演じるシャーリーズ・セロンの美しさも必見!
 とにかく宝箱のような1作です。彼女、彼氏とデートに行くなら是非この作品を選んでほしい。今年最高の後味のいい映画です。この秋以降、全国公開予定。