仲間

何事も「自分が一番!」と自信過剰な師範代ですが、人生の中で「こいつにだけはかなわない。」と思った人間が二人だけいます。
一人は、「T」。もう一人は、「S」。
高校、大学とほぼ毎日一緒に過ごし、8ミリで映画を作っていた仲間です。


あるときは、彼らが出演者で俺が監督、あるときは俺がシナリオを書いて、彼らが監督して、何本もの映画を作りました。
「T」はもう「優しさ」のかたまりのような男でした。
身長180センチを越える立派な体格でしたが、本当に優しくて繊細なやつでした。
カメラマンとしての能力はピカイチで、その優しい性格とは、真逆の「冷たいクールな映像」を得意とするキャメラマンでした。
あの優しい眼差しだったからこそ、世の中の冷たさや非情さを冷静に映像化することができたのだと思います。
俺の監督する映画では、いつも「T」がキャメラで参加してくれて、彼のキャメラのお陰で自主映画の賞を受賞したこともあります。


もう一人の「S」は、ひとことで言えば、「天才」です。
映像の感覚、文章の構成力、芝居の能力、すべてがずば抜けた男でした。
どんな作品を作っても、彼のセンスに満ちた天才的なものを作っていました。
ぴあフィルムフェスティバル」や「えびぞり巨匠天国」でも作品が高く評価され、「将来有望!」とお墨付きをもらったクリエーターでした。
いま、自主制作出身の映画監督がたくさん活躍していますが、間違いなく「S」の方が才能があると思います。


残念ながら、「T」も「S」も、若くしてこの世を去りました。
人間的に素晴らしかったり、才能がある人間は、凡人より早く神様から召集がかかるのでしょうか?
彼らには、もっとこの世でやりたいことがたくさんあったはずです。
まったく不公平、まったくおかしな話です。


今日、大学時代の友人たちと二人の墓参りに行って来ました。
線香をあげて手をあわせていると、「まだまだだなぁ!おまえは凡人なんだからもっとがんばんなきゃ!」とやつらに言われている気がしました。
やつらに恥かしくない人生が送れているだろうか?俺は・・・・・。


以下にアップした映像は、「S」が「えび天」に出品した作品「前向きで行こう - Let's go positively 」です。
いま見ても「天才」の片鱗は感じていただけると思います。