宇宙戦争

eigadojo2005-06-29

こんな映画を観た。


本日、世界同時公開!
トム・クルーズ主演、スティーブン・スピルバーグ監督という「マイノリティ・リポート」コンビによる超大作。
初日&レディース・デーでごった返しているかと思いきや、通常の映画の初日並の入り。
本編が始まる前にピーター・ジャクソンの「キング・コング」の予告編が上映。
冒頭に「ピーター・ジャクソンです。」と名乗る人物が登場していたが、どう見ても別人!
彼らしいギャグ?それとも超ダイエットして人相が変わったのか?




以下、ネタバレありです





今回の作品が、H.Gウエルズの原作を現代に置き換えたものとは知っていましたが、ウエルズというよりこれはジョージ・パルに捧げられた作品です。
1953年のジョージ・パル・プロデュース作品「宇宙戦争」のほぼ忠実なリメイクなのです。(ってゆうか、ほとんど同じ!ガス・ヴァン・サントの『サイコ』かと思ったぞ!)


ストーリーはパル版と同じですが、群衆パニックシーンやトライポッドによる殺戮シーンなど、スピルバーグらしい切れのいい演出を観ることができて、師範代的には満足。
ただ、どうにも「ミステリーゾーン・豪華版」という感じで、金がかかっている割には、世界観が小さい。
今回はオリジナリティより、リスペクト重視。音楽業界で言えば、カバーバージョン的な作品と言えそうです。


映画冒頭のナレーションは、パル版にもあるものですが、今回はなんとモーガン・フリーマンが担当。
ミリオンダラー・ベイビー」「バットマン・ビギンズ」「ダニー・ザ・ドッグ」とあわせてモーガン・フリーマン祭り開催中!どこの劇場でもモーガンさんに会えます!


ここまで同じストーリーの作品を作っておきながら、全世界同時公開まで「謎」を引っ張ったユニーバーサル&ドリームワークスの宣伝チームは立派!
あんな宣伝してたらこんなストーリーって誰が予想する?少しは捻ってあるって普通思うじゃない!裏の裏は表って感じの捻りだね。


スピルバーグの演出コンセプトは、あきらかに「9.11」以降のアメリカ人の抑圧された心を描くこと。
トライポッドが攻めてきたシーンでダコタ・ファニングが「テロ?」と叫ぶシーンにそれは端的に表されています。
50年代のSF映画の多くが「共産主義」を「宇宙人」になぞらえて描き、当時のアメリカ人の喝采を浴びたというのは有名な話ですが、今回の「宇宙戦争」は、テロが横行する世界で、我を失いパニックを起こす民衆の姿を描いております。
この手の映画で必ず出てくる「政府の人々」がまったく登場せず、ブルーカラーの主人公一家(トム&ダコタ)のみに焦点をあわせた構成は、これが「民衆の物語」であることを告げております。
民主的手続きで独裁政権が誕生する物語:「スターウォーズ エピソード3 シスの復讐」は、ブッシュ政権への不安を明らかに描いておりましたが、このスピルバーグ作品も、パニック映画の形を借りた現政権へのプロテストのような気がします。
「テロ」を恐ろしがっているうちに、敵ではなく民衆の心が恐ろしい魔物を生み出す・・・・・。この映画の中で恐いのは、宇宙人ではなく人間です。
エンディングの唐突さは、前に日記に書いた「ハウルの動く城」(http://d.hatena.ne.jp/eigadojo/20041119)にも通じる部分があるのでは・・・・・・・・。


この映画を観た後、是非読んでもらいたい小説があります。
梶尾真治さんの「清太郎出初式」です。(『もう一人のチャーリイ・ゴードン―梶尾真治短篇傑作選 ノスタルジー篇 』(ハヤカワ文庫) 収録)
カジシンさんによる「宇宙戦争・熊本版」です。
いつかは、師範代も、この作品のカバーバージョンを映像化したいと密かに思っています。