誰も知らない

こんな映画を観た。

「ワンダフルライフ」「ディスタンス」の是枝裕和監督が、1988年に実際に起きた「西巣鴨子供4人置き去り事件」をモチーフに映像化。今年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門では、長男役の柳楽優弥が日本人初となる男優賞をカンヌ史上最年少で受賞しています。
ドキュメンタリー・タッチの演出は、事前に台本に書かれたセリフを言わせるのでなく、設定を与えて彼らの中からでてくる言葉をすくいとるという独特の演出法によります。

師範代流に言えば、この映画は「贅沢」な映画です。
それは予算が多いとか出演者が豪華とかいうハリウッド的な「数字的贅沢さ」とは別次元のものです。
登場人物の揺れ動く心や過ぎてゆく時間の流れをキチンと描くには、撮影するために相当の下準備が必要で、そのためにスタッフはかなりの時間も費やしたはずです。今の日本映画界においては、こういう作り方が最も「贅沢」なのです。
子供4人で生活する内に荒れてゆくマンション室内の描写やボサボサになっていく子供たちの髪の毛など、演出であるはずなのに、ドキュメンタリーを見せられているような「時間」を感じさせる描写が秀逸です。
母親役のYOUや子供たちをはじめキャストはどれもすばらしい!あえて特筆するとすれば、父親の一人を演じる木村祐一とコンビニ店員役のタテタカコ(主題歌『宝石』もグッと来ます!)が予想外の好演です。