ザ・ロイヤル・テネンバウムズ

こんな映画を観た。
以下の文章は熊本のタウン誌「モコス」に書き下ろしたものです。

どんな名監督にも新人時代があります。
今や「キング・オブ・ハリウッド」と呼ばれ飛ぶ鳥落とす勢いのスティーブン・スピルバーグ監督でさえ、スタートは8ミリの自主製作映画でした。この夏大騒ぎの「スターウォーズジョージ・ルーカス監督も、南カルフォルニア大学の映画学科の出身。撮影所の徒弟制度が主流だった70年代の映画界において、学生映画出身の監督に巨額の予算を任せるというのはとんでもない大博打だったのですが、彼らの才能がそれを可能にした訳です。逆に言えば、次の世代の巨匠たちも、今は才能を秘めた新人監督である筈なのです。

今回ご紹介するのは、昨年末アメリカで公開されるや「オーソン・ウエルズの再来!」「ジャン・ルノワールの復活!」と絶賛されたウェス・アンダーソン監督作品「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」です。そう!次世代の巨匠がここにいます!!
かつては「天才ファミリー」として脚光をあびたテネンバウム家。家長のロイヤル・テネンバウム氏は、かなりな「オレサマ主義」な男。自分勝手な人生を送った結果、天才児の子供たち3人は、それぞれに問題を抱えた大人に成長。一家離散状態だったファミリーが「もう永くないかも・・・・」という父の一言で、渋々再結集するのですが・・・・・。

アンダーソン監督は、これが監督3作目。ところがデビュー作の「アンソニーのハッピーモーテル」は、日本ではTV放映のみ、2作目の「天才マックスの世界」はビデオリリースのみという不遇な扱い。(やる気のない邦題がなんか悲しいぞ!)今回のこの作品で初めて日本の劇場デビューということになります。
これまでの悲しい扱いとは逆に、この作品は映画ファンに長く語り継がれる作品になることは間違いなし。映画の冒頭20分。テネンバウム家の家族を紹介するめまぐるしいショットの連なり。BGMにビートルズの「ヘイ・ジュード」を使い、まるで本のページをめくる様に次々と語られていくテネンバウム家の異様なエピソード集。このオープニングを見るだけでも入場料金を払う価値あり。(DVDだったらこの部分をリピート再生したい!!)
キャストは、アカデミー俳優のジーン・ハックマンをはじめグウィネス・パルトロービル・マーレー、ベン・スティーラー、ダニー・グローバーなど芸達者がずらり。
アメリカの映画雑誌を見ると、このウェス・アンダーソンや「マグノリア」のPTアンダーソン、「マルコビッチの穴」のスパイク・ジョーンズなどが「ニュー・パワー・ジェネレーション」と呼ばれているそうです。次世代のアメリカ映画界を背負って立つのは、やはりこいつらなのだ!!
可笑しいけれども、どこか悲しい傑作「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」は、この秋にロードショー公開。明日の巨匠を目撃せよ!