宮崎駿の<世界>

at 2001 08/30 04:24
宮崎駿の“世界” (ちくま新書)
こんな本を読んだ。

ウルトラマンエヴァなどをモチーフに評論活動を行っている切通理作宮崎駿論。
新書版なのだけれど、活字が2段組になっているページも多くかなり読みごたえあり。

「宮崎論」というと、彼の表現者としてのすばらしさを讃える「礼讃派」とその「ロリータ性」や「社会主義性」に注目した「ダークサイド派」のどちらかに二極分化する傾向が強いのだけれど、切通の今回の著作は、そのどちらにもスポットをあてながらも、一面的な切り口に終わらない深い洞察が行われています。
膨大な資料から宮崎の仕事ぶりを検証している点はすばらしく、監督以前の仕事、「長靴をはいた猫」や「太陽の王子ホルスの大冒険」で1アニメーターに過ぎない宮崎がいかに作品の完成度をあげたかということがよくわかります。(以前のレビューでこのへんの作品に宮崎がタッチしていないと書きましたが、大間違いでした。師範代反省!)

難しい理屈より、表現の検証という点に力点を置いた今回の著作は、切通の評論家活動の中でもターニング・ポイントになる仕事になっているようです。

宮崎アニメファンにもアンチ・宮崎ファンにも一読をオススメします。