仮説・松本人志はすごい映画を作っているのではないか?

eigadojo2007-01-05

忙しいながらもいくつかお正月特番を見た。
中でも興味深かったのはダウンタウンがらみの番組だ。
師範代が同年代の表現者として「こいつは天才!」と認める数少ない男が松本人志だ。
この年末年始の松本の仕事ぶりは、他の追随を許さないものだった。
番組を見ながら師範代は、ある仮説にたどり着いた。
その結論は後述する。


まず年末の「人志松本のすべらない話・年末拡大スペシャル」。
サイコロを振って名前のでた芸人が面白い話をするというシンプルこの上ない構成の番組。
「芸人の異種格闘技」とさえ呼ばれるこの番組では、松本は出演者の話を聞きだす役に徹していた。
お笑いに関して、そういう「タモリ」的立ち位置をすることがなかった松本が、この番組では司会者的立場に立って、その状況を楽しんでいるように見える。
「すべらない話」は今回で8回目の放送らしいが、今回「浅草キッド」の水道橋博士関根勤というダウンタウン派閥でないお笑いキャストを入れていた。お笑い業界でも「別リーグ」の選手を起用するというのは、ある意味、松本がプレイヤーとしてよりも、全体を統括する演出家としての立場を選択をした結果のような気がする。


次に、年またぎ日本テレビ系特番の「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!晦日年越しスペシャル絶対に笑ってはいけない警察24時!!」。
年またぎ特番なのに、生放送でなく録画番組を放送するというのも、かなり挑戦的だ。(松本本人が番組内で言っていた。)
「24時間罰ゲーム」の企画は、これまでも様々な企画で実施されてきているが、今回は予算もかなりかかった大がかりなものだった。
「あとでDVD化されるので視聴率は期待できない」と松本は言っていたが、視聴率もかなり高かったようだ。


そして昨日TBS系列で放送された「史上空前!笑いの祭典ザ・ドリームマッチ07」。
お笑い芸人をシャッフルして新しいコンビで漫才やコントをやらせるというこの企画。
松本は「タカアンドトシ」の「トシ」とのコンビを選択した。
今回、これまでの2回のくじ引き組み合わせと違いフィーリングカップル方式の組み合わせ方法がとられている。
つまりは、松本はトシとのコンビを意図的に選択したということだ。
舞台で披露されたのは、オーソドックスなガチンコ漫才だった。それもかなり高度な漫才。松本のボケに対して容赦なくツッコミまくるトシ。それはまさに初期のダウンタウンがやっていた恐ろしいスピードで展開する漫才の再現だった。


この3本目の番組を見た時点で師範代は、あることに気がついた。
「原点回帰」だ。
松本はもう一度、本気で「お笑い」をやろうとしている。
ここ数年、例の「ごっつうええ感じVSフジテレビ事件」(ヤクルト優勝のため番組が差し替えられたことに怒った松本が番組終了を宣言)以来、「王道のお笑い」というより、「新しい笑い」、「マニアックな笑い」を追及してきた松本だが、それはある意味狭い袋小路に自分を追い込むことになっていった。
最先端で新しいものをやればやるほど、大衆的でない笑い、見るものを選ぶ笑いというかたちに先鋭化してゆく。
しかし、この年末年始の松本は違っていた。
明らかに松本の目指すものが、原点に回帰していることが感じられる。
そのことは今回の「ドリームマッチ」に、去年審査員だった志村けんを起用したことにも現れている。
昨年松本とコンビを組んでシュールコントを披露した三村を、今回志村の相方と設定したのも松本だと師範代は見ている。松本は番組の企画構成に深く関わる芸人である。キャストの組み合わせは偶然の産物でなく考え抜かれたものだと考えていいだろう。(去年のこのシュールコントは、かなり完成度の高い笑いだったのだが、観客に理解されずブーイングを受けている。)
去年のリベンジを、松本は自分をはずして志村という「日本の王道芸人」を起用することで実現したのだ。
ここで三村&志村のコンビがやった「牛乳のみコント」も、ドリフの昔から志村がやっているネタだったが、途中で三村と志村のキャラを入れ替えるという実験的演出を加えることで「原点回帰でありつつ実験的」という離れ技を見せていた。(ちなみに優勝したのは、この志村&三村コンビだった。)


つまりは、松本人志はもう一度大衆を相手にしたお笑いをやろうと決意したということなのだが、その原因が、昨年密かに撮影された松本人志監督作品の映画ではないかと、師範代は思っている。
お笑い以外の表現媒体を得たことで、ホームグラウンドのお笑いに余計な表現を詰め込む必要がなくなったのではないだろうか?
だとすれば、彼の監督した映画は、途方もなく新しくてシュールなものになっているのではないだろうか?
だからこそ年末年始の松本は、新しいことをやるという切り口でなく、原点回帰という方法論を選択することができたように思うのだ。


あくまで師範代の仮説なのだが・・・・・・・。

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