アレックス

アレックス プレミアム版 [DVD]
こんな映画を観た。
以下の文章は雑誌「モコス」に発表したものです。

東京の電車や地下鉄内には、よく映画の広告が「中吊り」として掲示されていて、乗客を楽しませてくれます。ひとつの電車が全車両、映画の広告だけで埋め尽くされた「映画電車」などに乗り合わせると、映画好きとしてはなんだか得した気分になったりします。   
そんな車内広告に関して今話題となっているのが、新作映画「アレックス」。ポスターのビジュアルが「卑猥」だということで、JRや地下鉄が車内掲載を拒否したのです。
なぁぁぁにぃぃぃ!!「アレックス」とはそんなにスケベーな映画なのか?ううむむむむ!気になる!気になる!気になる!これは観なければ!是非とも観に行かなければ!と、限りなく妄想を膨らました師範代、またまた完成披露試写会に潜入してまいりましたッ!

「アレックス」は、「カルネ」「カノン」と問題作を連打してきたフランスの鬼才ギャスパー・ノエ監督の最新作。モニカ・ベルッチヴァンサン・カッセルという実生活でもパートナーである二人の俳優が夫婦役を演じ、何の理由もなく幸せが奪われる悲劇を、実験的かつ恐ろしいほど美しい映像で描いている作品でした。
設定を聞いて「おや?」と思ったあなたは映画通。そう!この作品は、巨匠スタンリー・キューブリック監督の作品から数々のインスパイアーを受けています。「アレックス」という名前は、「時計じかけのオレンジ」でマルコム・マクダウェルが演じた暴力に魅せられた少年の名前、主役に実際のカップル俳優を起用するというのは、「アイズ・ワイド・シャット」、さらに劇中の部屋には「2001年宇宙の旅」のポスターまで貼ってあります。
今年になって「キューブリックの子供たち」とでも言うべき作品が、数多く公開されています。窪塚洋介の「凶気の桜」やスピルバーグマイノリティ・リポート」も巨匠への挑戦状とでもいうべき作品でした。そんな中でもこの「アレックス」は最もキューブリックへのリスペクトが感じられる作品。いわば巨匠へのラブレターです。
この作品が描こうとするのは「暴力と愛」。通俗的になりそうなこのテーマですが、いま「世界で最も美しい女優」といわれているモニカの壮絶な演技は、スクリーンを突き破って、観ているこちら側にまで大きな衝撃を与えます。あんたは偉い!スケベー心で映画を観に行った自分が恥ずかしいです。ちょっとドラマに出たぐらいで「私女優よ。」とかぬかしやがるどこかの国のタレントどもとは、モニカ・ベルッチ、器が違います!あなたこそ女優です。
という訳で、この映画は観客を選ぶ映画です。実際観た後に「不快な映画だ!」とバッシングを受けたりしているのも事実。「電車広告拒否事件」もそのへんに原因がありそうです。ただ楽しむだけが映画の在り方ではないのです。映画と対決し、打ちのめされるぐらいの衝撃を与えられる・・・・・・。それもまた映画の魅力といえるでしょう。ギャスパー・ノエ!俺はあんたを支持するぜぇ!2月全国公開だ!

映画「アレックス」の公式ウェブサイト
http://www.alexmovie.jp/